残業が増える?サマータイムが導入されたら何が変わる?


ここにきてまたも導入論が加熱してきたサマータイム。

サマータイムは、夏を中心とする日照時間の長い時期に時計を1~2時間早めて、昼間の明るい時間を有効活用しようというもの。

アメリカやヨーロッパの一部地域などでは導入されている制度です。

要するに早く出勤して、その分早く退社しようというものですが、定時になっても外が明るいので、結局は残業時間が増えるだけになるのではないかという批判もあります。

サマータイムが導入されたら何がどう変わるのでしょうか?

ちなみにアメリカなどでは「デイライト・セービング・タイム(daylight saving time (DST)」と呼ばれています。

メリット

サマータイム導入で得られるメリットは以下のようなものがあげられます。

  • 暑さ対策
  • 省エネ
  • 時間の有効活用
  • 経済効果
  • 犯罪防止

暑さ対策

特に2018年の夏は恐ろしい酷暑となっています。

朝9時を7時に早めるだけでも4度ほど気温は下がります。

その分午後の暑い時間に退社となってしまいますが、今よりは午前中の時間を有効的に使えるようになります。

省エネ

朝の比較的涼しい時間から仕事をはじめて、まだ暑い15~16時に退社することになるので企業の冷房にかかる電気を節約できます。

時間の有効活用

個人に関係するのはここです。

仕事が終わってもまだ明るいので、ちょっとした外出や外食をするなどいわゆるアフターファイブでの選択肢が増えます。

確かに、仕事が終わってまだ明るいと何だか得した気分でちょっと寄り道したくなりそうです。

経済効果

企業の電気代が節約され、外出や外食で個人消費も増えるので、大きな経済効果を生みます。

その経済波及効果は年間7000億円にもなると試算されています。

犯罪防止

明るい時間に帰宅できるようになるので、夜間に起こりやすい犯罪が減ることになるでしょう。

デメリット

逆にデメリットになりそうなのは以下のとおりです。

  • 残業時間の増加
  • システム変更におけるコスト増加
  • 睡眠障害などの体調不良

残業時間の増加

一番の懸念はこれです!

就業時間になってもまだ明るいので、結局残業することになって、ただの早出になるのではないかと懸念されています。

特に野外で働いている人で、非正規雇用の人は時間制なのであまり影響はありませんが、正社員の残業時間の増加が危ぶまれています

2時間早めた場合の就業時間が15~16時で、外はまだピークに近い暑さ。

暑い中帰宅するくらいなら涼しいオフィスで残業しようかな、なんて考えてしまいそうです。

システム変更におけるコスト増加

ある日から突然時間を繰り上げるわけですから、あらゆる機械の時間設定をすべて同時に変更する必要があります。

このシステム変更にかかるコストが大きいというデメリットがあります。

最初に大きくかかるシステム変更費用を冷房にかかる電気代が安くなることでペイしていくことになります。

睡眠障害などの体調不良

時間のずれに対応できず、睡眠障害者の症状が悪化する人や新たな発症者を生む恐れがあります。

これにかかる治療費や、作業能率の低下と事故の発生によって、結局は大きな経済的損失が出るのではないかと懸念されます。

なぜ今サマータイムなのか

東京オリンピックの暑さ対策

そもそもなぜ今サマータイム導入の話が持ち上がったのでしょうか?

2018年7月末、東京五輪組織委員会の森喜朗会長が安倍総理と面会した際に、酷暑が予想される東京大会の暑さ対策としてサマータイム導入を要請したことがきっかけです。

2時間時計を早めて、9時~17時を7時~15時にするというのが森会長の案。

午後はともかく午前中は多少気温の低い時間に競技を行うことができます。

確かに、今年のような暑さだったら選手も観客も熱中症続出です。

戦後に一度実際されている

実は日本でも過去にサマータイムが導入されたことがあるんです。

戦後GHQの占領下で1948(昭和23年)「夏時刻法」という法律が施行され、その後4年間夏時間が実施されました。

このときも残業増加や寝不足を引き起こすなどの批判が多かったため、占領終了とともに夏時刻法が廃止されています。

ちなみに当時は、サマータイムではなく「サンマータイム」と呼んでいたそうです。

省エネ対策で再び導入を検討

実はサマータイム導入は、突然降ってわいた話ではなく、2004年頃から政府は本格的な導入に向けて検討が重ねられていました。

省エネ対策や経済効果を狙ってのことですが、その間の政権交代や東日本大震災などの影響で、優先度は高くなかったようです。

2004年、高緯度(地図の上のほう)にある北海道は、夏の日中時間が一番長いので、その時間を有効活用しようと札幌商工会議所が主体となって、「北海道サマータイム月間」が導入されました。

時計はそのままで、企業などの就業時間を1時間早める方法で、札幌市を中心に705の企業や行政機関の約3万人が参加しました。

ただ、2007年以降は実施する企業が激減し、景気低迷の長期化でエネルギー消費量が減っているために省エネの効果が出にくくなっているとの理由から、2010年は実施しないことに決定しています。

まとめ

賛否両論ありますが、どちらかというと否定的な意見が多いようです。

サマータイムを導入したものの、結局廃止した国も多いので、やはり十分な検証や社会実験を行ってから導入すべきだと思うので、2020年の導入はさすがに難しいでしょう。

「日本社会には馴染みにくい」との意見がありますが、私は結局は慣れなんじゃないかと思います。

最初は残業が増えたり、体調を壊す人が出ても、導入して20~30年もすればそれが当たり前になってデメリットも減っていくのではないかと思います。

大きな制度の変更なので、十年単位の長いスパンで考えることが肝要でしょう。

そういう意味では導入初期にデメリットが大きい現役世代の理解は得られにくいため、実現は難しいでしょうね。